愛を語るより


先輩の部屋の掃除中に、俺はすごいものを見つけてしまった。
ベッドの下と言えばエロい本の隠し場所のお約束なんだけど、まさかほんとに見つけちゃうなんて。
って言うか。

『恋愛と性交のフィロソヒー』

いったいこれって・・・何?

なんか題名はあれだけど、内容は細かい字ばっかりでいわゆるそういうおかず系のものではないのは確かだ。
でも本棚に入れずに隠してたってことはやっぱりそういう系のエロい本なのかな。
いやでも先輩一人でなんかする必要無いし!もうそんなのいくらだって俺が!この俺がっ!恋人(にひゃっ!)であるこの俺が!!

はあはあ・・・少し落ち着こう。

失礼しますと一応小さくつぶやいて、先輩のベッドに腰掛けてパラパラとページをめくった。
そしてその中の、ご丁寧にシオリが挟んである一つの項目に目が止まった。

同性愛

その定義から歴史からあれこれあった後になんとセ・・・コホンっ、性交の手順やら快感のしくみやら丁寧に説明してある。
まあ・・・そう言われればそうだし違うと言えば違うし。
ここを刺激するとみたいなツボは先輩のとは少し位置が違う。って言うかこれ人それぞれだから。
うーん、今更こんな本読まなくたってみたいな、むしろ俺に聞いてくれれば実地で教えちゃうのにみたいな、そんな内容なんだけど。

でもたまに、おおっ確かにって思う表記はある。
いや俺も一応経験は豊富だったりはするけど、なんていうかその、一方的な立場なもので、逆サイドについてはさすがにそんなには詳しくないって言うか。

恋人って関係になってからだいぶ経って、エッチもまあそれなりに、週イチ・・・とまではいかないけど普通に。取り立てて不満も無い性生活が送れていると思ってたけど。

ううむ、先輩がこんな本を読んでる理由はなんだろう。もっともっとしたいってことかな。それともちょっとマンネリになっちゃってもう少し俺にどうにかして欲しいってことなのかな。

頭でなんか考えなくていいのに。体はあんなに覚えのいい優等生なのに。

つまりあれだな。先輩は勉強熱心なんだ。飽くなき追求心。尊敬します。

そーっと本を元の場所に戻した。
なんだかとっても先輩が恋しくなった。
会いたい会いたい会いたい。会って抱きしめたい。

そう思ったらもう、足は勝手に走ってた。






あいつ・・・また掃除しやがったのか。あのマメな男のことだからベッドの下もぬかりなく掃除機かけたんだろう。

今日はちょっとだけ経過見たらすぐ帰るって言っておいたのに、なぜかあいつはわざわざ俺を迎えに大学までやって来て、校内は絶対禁止って何度も言ってるのに抱きつくわキスするわ、なんだか・・・まあいつもだけど、いつもより少し変だった。
家に帰ってからもいきなり玄関で襲ってきたのでさすがに張り倒してこうして部屋に戻って来た訳だが。

部屋が片付いてやがる。
いや別にそれはいいんだが。

ベッドの下を覗いた。
綺麗に埃が取られてるってのに本の位置だけはきっちりそのままだ。逆に怪しいだろっての!

ったく。これは決していかがわしい本では無い!
なんでこんな本をわざわざネットで買ったかと言えばそれはやはりさすがにこんなに自然になってしまった関係に少しだけ危機感を感じることがいくら何でもあるからだ。

人に言えないと言えば俺は言えますと言うし、結婚もできないのにおかしいと言えば、愛する人と一緒に暮らすのに契約とか別に要らないんです、関係無いって断言するし。


だんだんなんだかそんな森永に毒されて、そうかななんて思って納得してしまう自分の心が不安になる時だってそりゃあるんだよ。

人が人を愛することについて書かれたイージーな哲学書。

人を愛することは自然なことだって。愛ってのは一つの形じゃないんだって。あれこれあって俺もようやく分かった。この感情を抑えようとするとあちこちに支障が出るってことも。
でもだからそれでいいって簡単に行くもんじゃないんだ。
俺はやっぱり頭できちんと納得しなきゃだめなんだ。
そうしないと前に進めない。

哲学なんてもっとも縁遠い学問だったのに、だからこそきっと俺はそれを知る必要があると思った。
哲学者はみんな悩んでる。俺はこの科学じゃどうにも納得いかない状況をどうにかしたかった。



「せんぱーい、せんぱいってば。もう着替え終わったでしょ?出てきてくださいよ〜。寂しいですってば。もう何もしないから。ね?」

ドアの外から甘え声が聞こえる。

「うるせえ!まだだ!」

・・・本当はおまえや巴が少し羨ましい。

この不可思議な現象を悩まずに受け入れてる。俺もそんな性格だったらお互いもっと楽しく暮らせる筈なのに。俺だって本当はこんなもんなんか読まなくたって・・・

何も考えずにおまえに応えてやれたら・・・


「さっきはすみませんでした。あの・・・お茶入れますから一緒に・・・」

「おまえ今日この部屋入った?」

「え、いや、いいえ、あ、うそ、入りました!でも掃除しただけです!」

ったく、この馬鹿が。動揺してんじゃねえよ。
よし、じゃあこの際もっと動揺させてやる。

「こっち。入れ」

「え・・なに?」

「座れ」

「何ですか?反省会?先輩?なんで?まだ怒ってるの?」

「疑問符ばっかりうっせえ!いいから座れ!」

おもむろに森永のジーパンに手を掛け、ファスナーを下ろして下着も下ろす。
キャーとかカマっぽい制止は無視して口に含む。
やり方は論理的かつ哲学的にあれこれ詳細に書いてあったけど個体別の大きさへの対応は書いて無かった。自分の経験と刺激による硬度の変化で推し量る。多分この辺が最大作用点だ。

「どして・・・いきなり・・・口でって・・・あっ」

ビンゴのスポットに舌を這わせながら思う。
何でするのか、したいのかって言われたら好きだから。
その答えしか行き当たらない。好きじゃなきゃ誰がんなもん咥えるかっての。


「は・・・あ・・・。すごいよかった・・・知らないよ、こんなにしちゃって。覚悟してよ?」


覚悟なんかとっくにできてる。

俺はおまえが好きで、おまえが喜んで、おまえも俺が好きで、俺も嬉しくて・・・
だからそれでいいってのが俺の哲学だ。
変な学問だな、哲学ってのは。自分がそうだと納得すればそれが答えらしい。
期待した結果が出なくて大変な思いをする化学とは大違いだ。


俺は悩む。きっと一生問いは続く。一つ解決すればまた新たな問題が出てくるのは必至なこと。
そしてまたきっと何かに縋る。今度は文学か、心理学か。

それでも結局全部答えはおまえになるんだろう・・・な・・・なんて今世紀最大の摩訶不思議な大発見は、
快楽の波の彼方でほわほわでぐちゃぐちゃでいつしかどっかに飛んでって訳分かんなくなっちまったので
残念ながら今回も未発表だ



end


ここの兄さんは自然にポイント大還元セール中みたいです


(2011/7/15)



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